モツにこみ━━第七夜:誰が彼を転した?(2)
モーツァルトのゴッタ煮‥第七夜
‥『レクイエム』の続きです‥
W. A. Mozart - Requiem K. 626 - III. Sequentia: Confutatis - L. Bernstein - YouTube
モーツァルト『レクイエム』ケッヘル626 から
「コンフタティス」(ロック・ヴァージョン)
エレン・エラルプ(エレキギター)
コンフタティス(呪われた者)
Confutatis maledictis,
(コンフタティス マレディクティス)
呪われた者たちが退けられ、
Flammis acribus addictis,
激しい炎に飲みこまれる時、
Voca me cum benedictis.
祝福された者たちとともに私をお呼びください。
Oro supplex et acclinis,
私は灰のように砕かれた心で、
Cor contritum quasi cinis:
ひざまずき、ひれ伏して懇願します。
Gere curam mei finis.
私に至福の終末をお与えください。
「コンフタティス」も“最後の審判”の終末論思想が濃厚な部分で
映画『アマデウス』では、モーツァルトがその一節を作曲しながら臨終を迎える筋書きになっています↓↓
Confutatis - YouTube
映画『アマデウス』から
モーツァルト臨終場面.
ベッドで「コンフタティス」のスコアを即興で口述するモーツァルト、
筆記するサリエリ.
ウィーンの社交界から退けられ、無理な作曲と乱れた生活ぶりが祟って、すっかり健康を害してしまったモーツァルトは、
『魔笛』上演中に倒れて、サリエリの指示で自分のアパートに担ぎ込まれます。
かねて“モーツァルト密殺計画”を進めていたサリエリは、いまこそ計画を完成するときとばかり‥
病床で最後の力を振り絞って『レクイエム』の作曲を続けるよう促し、即興口述を自分が筆記しようと申し出ます‥
涙を流して感謝するモーツァルト‥「私はあなたを誤解していて申し訳なかった‥」
親しそうに笑みを浮かべてうなづくサリエリ‥
ところが、モーツァルトが口述を始めると、サリエリは、その天才的な即興のひらめきに、心底魅入られてしまいます‥
紋切りの固定観念を破る音程の衝突に、はじめは頭をかかえるサリエリ‥
しかし、モーツァルトの熱に浮かされたような口述によって、しだいに各声部のメロディーと壮大な和声の重なりがイメージされてくると、サリエリは、思わず口ずさみながら筆記を進めるのです‥
人間世界を揺るがし壊滅させるかのように、地の底から響く終末のとどろき‥
それは、一転して清らかな天上の歌声に変化し‥
ふたたび響き渡る地底の恐ろしい呼び声‥‥‥
↓↓こちらで原曲をじっくり聴いてから、もう一度、↑↑映画のカットを観てください。サリエリが頭を抱えた箇所、口ずさみ始めたメロディー、‥‥それぞれ、曲のどの部分なのか見分けられるはずです‥
W. A. Mozart - Requiem K. 626 - III. Sequentia: Confutatis - L. Bernstein - YouTube
Chor des Bayerischen Rundfunks
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
Leonard Bernstein
モーツァルト『レクイエム』ケッヘル626 から
「コンフタティス」
バイエルン放送合唱団
バイエルン放送交響楽団
レオナード・バーンスタイン(指揮)
楽譜付きで、しっかり研究したい人は、↓↓こちら
Confutatis K.626 - Scrolling Score - YouTube
original soundtrack recording of the movie "Amadeus":
Neville Marriner; Academy of St. Martin in the Fields.
「コンフタティス」ケッヘル626 (スコア)
映画『アマデウス』サントラ(アカデミー・オヴ・セント・マーチン・イン・ザ・フィールズ管弦楽団、ネヴィル・マリナー(指揮))
ところで、
じっさい、どうだったのでしょうか?
モーツァルトは、ほんとうに誰かに恨まれて暗殺されたのか??モーツァルト自身が、亡くなる数週間前に、温泉遊覧中の妻を訪ねて「ぼくは誰かに毒を盛られた」と告げていたために、死後、毒殺説がもっぱらの噂になり、ウィーンの新聞までが毒殺説を掲載するほどでした。
犯人像も、音楽活動のライバルだった宮廷楽長サリエリが、もっぱら疑われることになり、“サリエリによる暗殺説”は、200年以上たった現在まで尾を引いています。
映画『アマデウス』も、この説に尾ひれをつけて拡大したフィクションと言っていいと思います。しかし、モーツァルトの遺体は共同墓地に混葬され、墓標も立てられなかったため(これは当時の習慣だったとも言われ、またモーツァルト自身が終油を拒否し葬儀を望まなかったせいとも言われます)、遺体を検査して死因を確認することは不可能になってしまいました。
モーツァルトの死後、サリエリが自殺未遂のうえ狂乱に近い状態で亡くなったのも、この“ぬれぎぬ”?に悩まされたことが原因のようです。サリエリ自身は、自分はモーツァルトの暗殺者ではないと、死ぬ直前まで訴えていたといいます。以上、ドイツ語版Wikipediaに遡って調べました。日本語版Wikipediaの記述は不正確な点があるので要注意!!
結局、モーツァルトが暗殺されたとする噂は実証不可能で、「毒殺されつつある」という本人の話も、錯乱状態による思い込みの可能性を否定できません。
また、当時のウィーンの衛生状態の悪さは歴史上周知のことがらでして、世話する人もなく不衛生な生活を送っていた晩年のモーツァルトは、どんな病気にかかってもおかしくない状態だったと言えます。
加えて、サリエリは、モーツァルトでは失敗したものの、その後ベートーヴェンという愛弟子を得て、りっぱに大音楽家に育て上げています。
たしかに、サリエリの作曲家としての才能はモーツァルトに及ばなかったものの、嫉妬して暗殺までしなければならないような動機があったとは思えないのです。
かりにライバルとして恨みを持ったとしても、モーツァルトが自分から宮廷の人望を失って没落して行ったことで、サリエリとしては十分だったはずです‥
ギトンは、“暗殺説”に根拠があるとは思えないのですが‥‥
W.A. Mozart Lacrimosa (techno) - YouTube
arr/prod: Carlo Rastelli
artist: Gimme5
Solo voice: Kerstin Brix
モーツアルト『レクイエム』ケッヘル626 から
「ラクリモサ」(テクノ・ヴァージョン)
カルロ・ラステッリ(編曲、演奏制作)
ケルスティン・ブリックス(ヴォーカル)
ラクリモサ(涙の日)
Lacrimosa dies illa,
(ラクリモサ ディエス・イッラ)
涙の日、その日は
Qua resurget ex favilla
罪ある者が裁きを受けるために
Iudicandus homo reus:
灰の中からよみがえる日です。
Huic ergo parce Deus.
神よ、この者をお許しください。
Pie Iesu Domine,
慈悲深き主、イエスよ
dona eis requiem. Amen.
彼らに安息をお与えください。アーメン。
「ラクリモサ」もアレンジの多い曲です。とくに、↑上のようなテクノ、トランス、レミックス系のアレンジがたくさん出ています。
Roger Sullivan - Lacrimosa from Mozart's Requiem for 12 Electric Guitars - YouTube
「ラクリモサ」(ヘヴィメタル・ヴァージョン)
ロジャー・サリヴァン(12弦エレキギター)
しかし、「ラクリモサ」のうち、モーツァルトが自分で書いた楽譜は、ごく最初の部分で中断していて、大部分は弟子たちが補筆したものなのです。モーツァルトの自筆譜だけを演奏すると、こうなります‥↓↓
Lacrimosa, Unfinished version, from Mozart's Requiem K. 626 - YouTube
This is the Lacrimosa from the original unfinished version of Mozart's Requiem. Performed by New Berlin Chamber Orchestra, Christopr Spering conductor.
「ラクリモサ」(自筆譜、オリジナル・ヴァージョン)
新ベルリン室内管弦楽団
クリストフ・シュペリング(指揮)
あっというまに終ってしまいます。モーツァルトが残したのはたったこれだけなのですから、自由なアレンジにも正当性があると言えるのかもしれません。。
↓次も、中断していますが、ジャズ・アレンジです
Compartiendo Jazz. Lacrimosa - YouTube
Fragmento de Lacrimosa
Heberto Castillo
Album Compartiendo Jazz
「ラクリモサ」(ジャズ・ヴァージョン、断片)
ヘルベルト・カスティッロ
さて
最後は、ちょっと変わりダネですが、エジプシャン・ヴァージョン?!
中間で、エジプトの現代ポップスに繋いでいます↓
Mozart l'égyptien - DJEDDAH 2008 - YouTube
Mozart, l'égyptien- Hugues de Courson/ video MILOSZ LUCZYNSKI
「ラクリモサ」(エジプシャン・ヴァージョン)
ユーグ・ド・クルソン