ギトンの秘密部屋だぞぉ

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コレッリ━━ジャズ・ブルースにも影響及ぼすバロックのパイオニア


アルカンジェロ・コレッリは、バッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディよりもさらに30年ほど古い作曲家。。

今年はコレッリの生誕360周年だそうで‥‥ヨウツベにもコレッリの曲がいろいろ出ているので、このさいコレッリ特集
‥‥と思って夏あたりから何度も漁ってみたんですけどね。。。
なんというか‥‥ヴィヴァルディのように分かりやすくない!!‥‥バッハのように…うぅっ凄いッ て感じでもない…

正直言って、キレイで、すまし顔で、‥‥とっつきにくいんですよねえ…
いまいち現代人の感覚ではないんです‥‥

コレッリ聴いて肩が凝れっり
。。。なぁんてね(→←)

A. Corelli - Sonate da Camera Op.2 - No.12 in G Major - YouTube
Sonate da Camera a trè, Op. 2 (Rome, 1685) dedicated to Cardinal Benedetto Pamphili
Sonate No. 12 in G major, I. Ciacona, largo-allegro
Rémy Baudet, violin. (G. Grancino 1695). Sayuri Yamagata, violin. (J. Stainer 1669).
Pieter-Jan Belder, harpsichord. (Cornelis Bom 2003, after Giusti).
アルカンジェロ・コレッリ『室内ソナタ集 作品2』第12番ソナタ ト長調 から
第1楽章“チャッコーナ” ラルゴ - アレグロ
レミ・ボーデ、ヤマガタ・サユリ(ヴァイオリン)
ピーター=ヤン・ベルダー(ハプシコード)
古楽器使用〕


しかし、よぉっく聴けば‥‥たしかに、いい曲ばかりなんですよ‥駄作がない!‥‥でも、そこまで聴きこむのは、ギトンのレベルの素人さんにはなかなか骨の折れるしごとなんです‥

それと‥‥コレッリの曲は、バッハやヴィヴァルディよりも永いこと忘れられていたせいか‥‥演奏者によって曲の感じがまるで違うんですね

。。。なので、演奏を選ぶのも一苦労で‥じっさいに何度も聴いてみないことにはどーにもなりません‥

というわけで、やっと年末近くなってのコレッリ特集です!
↓↓この合奏協奏曲1番は、れいのスロヴァク・チェンバー・オーケストラの演奏が‥‥それはそれはすばらしくて‥‥夏ごろから、ぜひいちど載せたいと思っていたのですが‥
‥‥なにせ14分という長さなので(
バロックの初めての曲を14分聴かされたら‥ふつうはタイクツしますw)ずっとためらっていたんですよね。。。

どうか‥じっくり聴いてみてください!!
A.Corelli Concerto Grosso No.1 in D major, Bohdan Warchal - YouTube
Arcangelo Corelli Concerto Grosso No.1 in D major
1. Largo - Allegro
2. Largo - Allegro
3. Largo - Allegro
4. Allegro
Bohdan Warchal 1st Violin, Conductor.
コレッリ『合奏協奏曲 第1番 ニ短調
スロヴァク室内管弦楽団
ボーダン・ヴァルシャル(指揮、第1ヴァイオリン)
〔現代楽器使用〕

 Wikipedia を見ますると:

なるほど‥‥「コレッリの作品は、旋律の美しい流れと伴奏パートの丁寧な扱いが特徴的」なのだそうです‥
‥遺されている作品の数が少ないのは、コレッリが1曲1曲を非常に時間をかけて丁寧に彫琢したため(英語版)‥

コレッリの曲では「ヴァイオリンのパートが、第三ポジションの最高音であるD音より上に行くことが決してない」、コレッリは「ヘンデルのオラトリオ序曲における高音楽節を演奏することを拒み、ヘンデルに対して『技術を誇示するためにだけこんな音を弾かせるとは』と痛烈な批判を浴びせた」──
つまり、“ヴァイオリンの音はこういう音”という古い考えにこだわって、きれいな曲以外は音楽ではないっ!! と言い切る感じなんでしょうかね



A. Corelli Concerto Grosso op 6 no 4, Il Giardino d'Amore, Part 2 - YouTube
Vivace - Allegro - Allegro
Il Giardino d'Amore Baroque Orchestra:
Stefan Plewniak (violin & leading)
コレッリ『合奏協奏曲 第4番』から 第4楽章
イル・ジャルディーノ・ダモーレ
ステファン・プレヴニャク(ヴァイオリン、指揮)

そこで気になるのはバッハ(
ヨハン・セバスティアン・バッハ)との関係ですが、
やはりバッハは勉強家ですね……コレッリの曲も、ライプチヒの図書館が所蔵していた楽譜をいろいろ研究して、自分の作品に取り入れているんですね…
コレッリの主題によるフーガ」という作品も書いています↓↓

J. S. Bach - Fugue for organ in B Minor on a theme by Corelli BWV 579 - YouTube
Fuga [on a theme of Arcangelo Corelli (1653-1713)] h-moll / B minor BWV 579
Ton Koopman, Organ,
ヨハン・セバスティアン・バッハコレッリの主題によるフーガ ロ短調』BWV579
トン・コープマン(オルガン)

やはり、バッハはちょっと重苦しいですか?‥
コレッリのもとの曲はというと‥
↓↓この第2楽章(2:35 - 3:55)を聴いてみてください

A. Corelli - Sonate da Chiesa Op.3 - No.4 in B Minor - YouTube
Arcangelo Corelli (1653-1713)
Sonate Da Chiesa, Opera Terza
I. Largo
II. Vivace
III. Adagio
IV. Presto
Rémy Baudet, Sayuri Yamagata, Albert Brüggen, David Van Ooijen & Pieter-Jan Belder.
コレッリ『教会ソナタ集 作品3』第4番ソナタ
ピーター=ヤン・ベルダー(チェンバロ),ほか

↓↓ネットで見つけた解説を対訳で載せてみますと━━
J.S. Bach studied Corelli's music (making his own arrangements of it), and also had Corelli's music in the Leipzig library from which he conducted performances. J.S. Bach wrote a fugue for organ (BWV 579) on a subject of Corelli taken from the second movement of Op. 3 No. 4 of 1689. That apart, a general, diffused influence of Corelli is perceptible in his music.
A 'walking bass', as used in the B minor Prelude in Part 1 of The Well-tempered Clavier (BWV 846-861), is a Corellian cliche;
B another is the half-close (Phrygian cadence) in the relative minor introducing, for example, the final movement of the Third Brandenburg Concerto.
Bach Cantatas Website - Arcangelo Corelli
「J・S・バッハは、コレッリの音楽を研究した(自分でアレンジしながら)。ライプチヒの図書館にはコレッリの楽譜があったので、彼はそのなかの曲を自分で指揮して演奏した。
 J・S・バッハは、コレッリの『作品3第4番』(1689年)第2楽章のテーマ(主旋律)に基づいて、『コレッリの主題によるオルガンのためのフーガ(BWV579)』を書いた。
 次のような、一般に広まったコレッリの影響は、バッハの音楽にも目立って見られる:
A バッハの『平均率クラヴィア曲集』第1巻(BWV 846-861)のロ短調プレリュードなどに使われている「歩く低音部」は、コレッリの御得意技である。
B もうひとつは、短調楽章から次の楽章へ導入する半終止(フリギア終止)──たとえば、第3ブランデンブルク協奏曲の終楽章(第2楽章の楽譜にはフリギア終止形のみが書かれており、独奏楽器が即興演奏をして、最後にオーケストラがフリギア終止で次の終楽章へ繋げるようになっている)」

↑↑この「歩く低音部(walking bass)」とは、どういうものなのでしょうか?
文中にある『平均率』第1巻のロ短調プレリュード(第24曲)を聞いてみましょう↓↓
Bach - Well-Tempered Clavier, Book 1: Prelude No. 24 in B minor (Gould) - YouTube
ヨハン・セバスティアン・バッハ平均律クラヴィア曲集 第1巻』から
「第24曲 プレリュード ロ短調
グレン・グールド(ピアノ)

左手でスタッカート気味にタッタッタッタッと上がり下がりしているのが「歩く低音部」‥‥‥‥
‥‥もう分かった方もいらっしゃるでしょうか?━━ウォーキング・ベースラインと言えば、ジャズではおなじみですよね?(^^d

ピアノ・ウォーキングベース(ブギウギ)
ピアノ・ウォーキングベース(枯葉)
↑↑ピアノでは、左手がウォーキングベースラインを弾いています。

アコースティック・ベース・ウォーキング(枯葉)
Sam Jones Walking during Miles Davis solo on Autumn Leaves. From the Album "Something Else" Cannonball Adderley
サム・ジョーンズ(ベース)
マイルス・デイヴィス(トランペット・ソロ 再生音源)

ギター・ウォーキングベース(枯葉)



さて、コレッリの作品では‥
↓↓たとえば、このソナタの第1楽章は、チェロがウォーキング・ベースラインを弾いています:

A. Corelli: Sonata in D, op.3/2 / musica cubicularis - YouTube
Ljubljana, 25. 5. 2011
Božena Angelova, Žiga Faganel - baroque violin
Domen Marinčič - baroque cello
Tomaž Sevšek - harpsichord
コレッリ『トリオ・ソナタ集 作品3』から
「第2番 ソナタ ニ長調
ドメン・マリンチチ(バロック・チェロ)
ムジカ・クビラリス
2011年.
しかし、それにしてもゆっくりしたウォーキング・ベースですね。まさに、バロック時代の貴婦人が、すその長いスカートを引き摺って、しずしずと歩いている感じです。。

バッハにしろ、ヴィヴァルディにしろ、コレッリから大きな影響を受けているのですが‥‥
いやいや‥‥それにとどまるものではなく‥‥コレッリは、時代を超えてジャズにまで影響を及ぼしていることが分かりました!!o(゚O゚)/

次は「イ・ムジチ」の演奏ですが、ウォーキング・ベースラインを聴き取れるでしょうか?‥

クリックで拡大  .
Corelli Concerto Grosso Op 6 No 8 (Christmas Concerto) - Allegro (IMusci) - YouTube
コレッリ『合奏協奏曲 第8番“クリスマス・コンチェルト”』から
第2楽章 アレグロ
イ・ムジチ合奏団

ところで‥
日本語版 Wikipedia では、作品5の『ヴァイオリン・ソナタ集』について、


コレッリの作品の「中でも最も有名」だ
と言って紹介しているのですが‥英仏独語版にはそんなことはゼンゼン書いてありません‥‥こういうの、誰かマニアの人が自分の個人的見解を滑り込ませて書いてるんですよねww‥

‥でも、じっさい聴いてみると、このヴァイオリン・ソナタ集は、たしかにメロディーのはっきりした分かりやすい曲が多いのです。。

A. Corelli - Sonate per Violino Op.5 - No.3 in C Major (2/2) - YouTube
コレッリ『ヴァイオリン・ソナタ集 作品5』第3番ソナタ から

題名はヴァイオリン・ソナタ集ですが、バロック以前の音楽は、楽器にはあまりこだわらないのです。演奏者の都合で、さまざまな楽器で弾いてもよいことになっています。
↓↓次はリコーダーの演奏
CHAARTS + Maurice Steger Corelli Concerto Nr. 7 - YouTube
Basel Martinskirche 17. September 2010
Maurice Steger, Recorder
Mayumi Hirasaki 1st violin
CHAMBER ARTISTS ORCHESTRA (CHAARTS)
modern instruments, baroque bows
コレッリ『ヴァイオリン・ソナタ集 作品5』から
「第7番 ソナタ ニ短調
モーリス・シュテーガー(リコーダー)
ヒラサキ・マユミ(第1ヴァイオリン)
チャーツ(チェンバー・アーティスツ・オーケストラ), 2010年.
↓↓次は、オーボエとギター

Arcangelo Corelli - Sonata N8 Op.5 for oboe & guitar,arr.V.Zhyvalievski (A.Prikhodko&V.Zhyvalievski) - YouTube
(Prelude, Allemande, Sarabande & Gigue)
аранжировка Валерия Живалевского исполняют Александр Приходько (гобой) и Валерий Живалевский (гитара)
Минск, Беларусь
コレッリ『ヴァイオリン・ソナタ集 作品5』から
「第8番 ソナタ
アレクサンドル・プリホチュコ(オーボエ)
ヴァレリー・ジヴァレフスキー(ギター、編曲)
ベラルーシミンスク

↓↓グースリ★,アコーディオンバラライカ!!

Arcangelo Corelli - Concerto grosso Op.6 No.4 D-dur - YouTube
Jaani-Kirik, Saint-Petersburg
Quintet of Four, Alantasia Fomina (gusli), Elizaveta Panchenko (organ)
コレッリ『合奏協奏曲 作品6』第4番 ニ長調
アランタシア・フォミナ(グースリ),ほか
サンクト・ペテルスブルク
グースリは、大正琴に似たロシアの弦楽器。水平に置いて指で弦をはじいて鳴らす。弦を押えるための鍵盤がついたものもある

↓↓リコーダーのほか、さまざまなバロック楽器が登場します^^

Stefan Temmingh - A. Corelli: Sonata op. 5 no. 10 - Gavotta - YouTube
in a version for recorder and baroque ensemble.
Stefan Temmingh (recorder and direction)
コレッリ『ヴァイオリン・ソナタ集 作品5』第10番ソナタ から「ガヴォット」
シュテファン・テミング・アンサンブル
シュテファン・テミング(リコーダー、指揮)

さて、さいごに:
西洋ではコレッリの作品の中でもっとも人気があるそうなんですが‥《クリスマス協奏曲》を聞いてみることにしましょう。。

ただ、この曲‥やはり、コレルリだけあって、なかなか奥の深い曲なのですよ。かんたんに楽しめる感じではありません…クリスマスに向ける思いがとおりいっぺんのわれわれには、ちょっと歯が立たないかんじもします‥‥
‥そこで、ここでは、比較的分かりやすい第5-6楽章を聞いてみることにしたいと思います。


メリー クリスマス!!

Corelli - Concerto per la notte di Natale - Tafelmusik - YouTube
Arcangelo Corelli: Concerto grosso fatto per la notte di Natale in G minor, Op 6, No. 8, movements 5 (Allegro, cut time) and 6
(Largo. Pastorale ad libitum).
Tafelmusik Baroque Orchestra. Jeanne Lamon, musical director.
コレッリ『合奏協奏曲 第8番“クリスマス・コンチェルト”』から 第5-6楽章
ターフェルムジークバロック・オーケストラ
ジャンヌ・ラモン(音楽監督)