ギトンの秘密部屋だぞぉ

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ヴィヴァルディ特集:きき比べ

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ヴィヴァルディ A.Vivaldi L'estro Armonico Op.3 No.9 Larghetto RV230 - YouTube for violin,strings and continuo.
I Solisti Italiani, Guilio Franzetti 1st violin
アントニオ・ヴィヴァルディ 協奏曲集「調和の霊感」作品3の9(RV230)より ラルゲット
演奏:イタリア合奏団

今回のヴィヴァルディは、現代楽器による現代風の演奏を選んでみることにします。

オススメは、やはり「イ・ソリスティ・イタリアーニ(イタリア合奏団)」。↑お聴きのとおり、スッキリさわやか系の演奏です


ところで。。。

驚いたことに、ランキングサイトの音楽系、《ヴィヴァルディ》のカテゴリーで、このブログが《1位》にノミネートされていました:

見れば、2位以下には、プロの演奏家のブログやら、音楽プロデュース会社の公式サイト、オーディオ趣味の方やクラシック・ファンの専門ブログばかりが並んでいます‥


べつに… ぼくは音楽のブログを書いてるつもりじゃないんですけど‥←


しかし、このさい、おだてに乗っかってみるのもいいじゃないかw…というわけで

ヴィヴァルディ特集をやってみたいと思いますw


題して── ヴィヴァルディとバッハの聞き比べ www

そして…どうせ比べるからには、同じ曲を聴き比べるのが分かりやすい(?!)…



じつは…、ヴィヴァルディの曲をバッハ(ここでは、ヨハン・セバスティアン・バッハ、つまり、父ちゃんバッハのことです)が自分好みに編曲したものがあるんです‥

17世紀、ヨーロッパ音楽の中心地だったイタリアで、ヴィヴァルディが、コンチェルトにミサにオペラに、大活躍をしていたころ、

バッハは、7歳年下で、アルプスの向こう側の僻地ドイツで(笑)‥教会のオルガニストをしておりました‥☆
ドイツなんていう場所は、‥フランス革命やら産業革命で世の中がひっくり返る前までは、どろんこ道に砂煙もうもうのド田舎でして‥、粋なイタリア人やフランス人から フフン! ペッペッ! と蔑ろにされていたのがドイツ人、
バッハなどは今でこそ“音楽の父”などと持ち上げられていますが
当時は、田舎の大道芸人の成れの果て‥いや、子孫だったのですから、

バッハは、ヴィヴァルディの名声をよく知っていましたが、
ヴィヴァルディは、バッハなどというバッカな音楽家がいることさえ知らなかったw──というのが定説だそうです。


☆(注) ギトンは音楽にはドシロウトでして、しかもその水準に照らしても、このブログに書いてあることは大ざっぱでマユツバですから、読者の皆さんは注意が肝要でありますwww

さて、バッハが26歳だった1711年、オランダのアムステルダムで、ヴィヴァルディの協奏曲集「調和の霊感」が出版されます

バッハはさっそく、これを手に入れましたが、あまりに軽妙洒脱なヴィヴァルディの作風は、ドイツの無骨な貴族たちには合わないと思ったのでしょうか‥‥ドイツ風に…つまり田舎風にアレンジしまして、
ダサい田舎者のドイツ人でも、恥じらいなく聴いてられるようにした《ヴィヴァルディによる協奏曲》が、数曲のこされています。

今回取り上げるヴィヴァルディの協奏曲と、バッハの編曲の関係を整理しておくと
↓次のようになります。


ヴィヴァルディ  バッハの編曲
 の原曲

 RV230 ⇒⇒ BWV972

 RV580 ⇒⇒ BWV1065  

 RV565 ⇒⇒ BWV596
RVはヴィヴァルディの作品に付けられている「リオン番号」。
BWVは「バッハ作品番号」です。

きょうの最初に聞いたRV230のバッハ編曲版(BWV972)を聴いてみることにしましょうか。ヴィヴァルディは、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、‥の優雅な協奏曲でしたが、
バッハのほうは、荘厳なパイプオルガンとトランペットの競演です。中間楽章(3:06〜)が、さきほどのヴィヴァルディ(「ラルゲット」)に対応しています:

Bach- Concerto BWV 972 d'après Vivaldi- Romain Leleu trompette- Ghislain Leroy orgue - YouTube
Bach, Concerto BWV 972 en ré majeur d'après Vivaldi
Romain Leleu, trompette; Ghislain Leroy, orgue.
Cathédrale de la Treille, Lille (France), Septembre 2012
バッハ「ヴィヴァルディによる協奏曲」BWV972 ニ長調
ロマン・ルリウ(トランペット)、ギスラン・ルロワ(オルガン)




さて、お次はバッハのほうから先に聞きませう‥

YouTube
Leonhardt-Consort, Concentus Musicus Wien.
バッハ「4台のチェンバロのための協奏曲」BWV1065
レオンハルト・コンソート、コンセントゥス・ムジクス・ウィーン
グスタフ・レオンハルト(指揮・チェンバロ)
チェンバロ4台とストリングスの合奏ですが、なかなかに複雑で、よく言えば重厚、悪く言えば重苦しい‥カシャッカシャッと規則正しい行進のような‥堅苦しい感じがしないでしょうか?

ところが、ヴィヴァルディのもとの曲は、↓こんな感じです
Vivaldi: Concerto for 4 Violins in B minor RV 580 - YouTube
I SOLISTI ITALIANI
ヴィヴァルディ「4台のヴァイオリンのための協奏曲」ロ短調、RV580
イタリア合奏団
なんと自由なのでしょう!!!!
まるで、空を飛ぶように軽やかではありませんかv



さいごの曲も、バッハから先に:

[Köhler] Bach: Organ Concerto in d, BWV 596 - YouTube
Johannes-Ernst Köhler (organ, 1972)
0:00 1a.movement - Allegretto
1:32 1b.movement - Fuga. Moderato
4:57 2.movement - Largo
7:36 3.movement - Allo Modo
バッハ「オルガン協奏曲」ニ短調、BWV596
ヨハネス・エルンスト・ケラー(オルガン)

なにか神秘的な感じさえします
しかし、もし重苦しくて嫌になったら、途中で止めてくださいw

↑いま youtube に出ていたバッハの楽譜を見ると、おだんごのような音符…多重和音が目立ちますね。このことを覚えておいてほしいと思います。


さて、ヴィヴァルディの原曲を、イ・ムジチの演奏で聴いてみます:

YouTubeRV565
Pina Carmirelli - Violin
Anna Maria Cotogni - Violin
Francesco Strano - Cello
I Musici, 1983.
ヴィヴァルディ「調和の霊感」作品3の11(RV565)
「イ・ムジチ」合奏団


こうやって聴き比べてみると、ヴィヴァルディの真価が納得できると思います。

ただし、もしヴィヴァルディのほうが良く聞こえるとしたら、それは、バッハのほうはアレンジだからかもしれません。バッハ独自のオリジナル作品には、ヴィヴァルディを超える魅力に満ちたものがたくさんあると申し上げておきませう‥


しかし、それにしても、なんでバッハは、こんなに音楽を重苦しくするんだろうか‥
クラシック音楽を堅苦しくした元凶はバッハぢゃないのか‥?!

ぼくは、次のように考えます:

ヴィヴァルディ‥たしかに、シンプルで美しいメロディー、透き通った軽やかな音感にあふれています。。
しかし、ヴィヴァルディの軽やかな音楽は、ベートーヴェンブラームスの重厚な交響楽が育つ土台になりえたでしょうか? ‥それは、残念ながらやはりムリだと思うのです。。
オシャレなイタリアの協奏曲からオペラへの流れだけがあって、バッハもヘンデルもいなかったとしたら‥ こんにちの西洋音楽は成立しなかったでしょう。。 オーケストラもジャズもロックも無かったと思うのです。。 AKB48は、三味線と尺八と、せいぜいヴァイオリンの伴奏で、ナニワ節のように唸っていたことでしょうwww

バッハのあの多声と和音の重苦しさは、クラシック音楽を誕生させ、ロマン派が花開くための陣痛の苦しみのようなものではなかったでしょうか‥‥


こうして、クラシック(古典派)の全盛時代を迎えると、バッハのような古い形式の音楽は、しだいに廃れ、ヴィヴァルディなどは完全に忘れ去られてしまいます

そして、19世紀末にバッハが再発掘されると、

バッハの曲の中に、ヴィヴァルディという人の作品を編曲したものがある──ヴィヴァルディっていったい何者だ??! ということになって、
忘れられていたヴィヴァルディの楽譜が、古い図書館の奥から発見されて日の目を見ることになるのです‥
当代の音楽の中心地にいたヴィヴァルディにはその名さえ知られていなかったバッハが、わずか数曲のアレンジを残してくれたおかげで、
ヴィヴァルディは危ういところで“消滅”をまぬかれたのですから、
歴史とは皮肉なものです‥


Vivaldi Op. 7 Con. 12, I Allegro - YouTube
Concerto No. 12 for violin, strings and basso continuo in D major, RV 214
Salvatore Accardo, Heinz Hollinger, I Musici de Montreal Chamber Orchestra.
ヴィヴァルディ「協奏曲12番 ニ長調」(RV214)から アレグロ
イ・ムジチ・ド・モントリオール室内管弦楽団


ここまでお読みいただき
ありがとうございます!

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